プロフィール

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SENSEI NO SHIGOTO

教室で子どもたちと過ごしてきた日々のなかで、考えたことを書いています。ゆっくり、ひとつずつ。

目をとじて、手をにぎろう

10年が、経った。あの子たちと、過ごした日々から。

ふとした拍子に、思い出す。あの教室。あの声。あのころ、小さかった、あの子たち。——もう、りっぱな大人になっているはずだ。あのころ、ぼくは、あの子たちの「未来」を、いっしょうけんめい、描いていた。こうなってほしい。こんな大人に。——でも、このごろ、思う。あれは、ほんとうに、あの子の未来だったのだろうか。

先生が、描く未来

先生は、こどもの、未来を描く。

この子は、こういう子だから、きっと、こう育つ。こういう力をつければ、こんなふうに。——よかれと思って、未来を、思い描く。でも、それは、たぶん、ぼくの見ている未来だ。ぼくの頭のなかの、こうあってほしい、という絵。——その子自身の未来とは、ちがう。

その子の未来は、ぼくには、描けない。描いたとたんに、それは、ぼくの未来に、なってしまう。じゃあ、その子の未来は、いったい、なんの先に、あるんだろう。

10年経って

10年経って、ぼくは、いま、あの子たちの「未来」のなかに、立っている。

ぼくが、あのころ描いた未来とは、たぶん、ぜんぜん、ちがう。あの子たちは、ぼくの想像など、はるかにこえて、それぞれの道を、歩いている。思ってもみなかった仕事をして。思ってもみなかった人と、出会って。——ぼくの描いた絵は、どこにもない。かわりに、あの子たち自身の「今」が、たしかに、そこに、ある。

ぼくの未来は、あたらなかった。でも、それで、よかったのだと思う。その子の未来は、ぼくが描くものでは、なかったのだ。

何を、みつめるんだろう

じゃあ、先生は、何を、みつめればいいんだろう。

未来が、描けないなら。この子が、どうなるか、わからないなら。——ぼくは、あの子の、何を、みつめていたんだろう。何を、みつめれば、よかったんだろう。未来でも、ない。成績でも、ない。できる、できないでも、ない。——じゃあ、何を。

考えて、考えて、ふと。みつめるのは、たぶん、遠くじゃない。描いた未来の、その先じゃない。

目をとじて、手をにぎろう

そうだ。目を、とじよう。

ただ、あたたかい。その、てのひらの、ぬくもりだけが、ほんとうだ。未来でも、過去でもなく。いま、この子のいま、ここ、たしかな。