想いのながれ
川の流れを、じっと見ていたことがある。
おなじ川なのに、場所によって、ぜんぜん、ちがう。岸のそばは、ゆるやかに。まんなかは、はやく。岩のところで、うずを巻き、よどみでは、ほとんど止まっている。方向も、勢いも、水の透明度も、みんな、ちがう。——でも、すこし、ひいて、川ぜんたいを見れば。すべての水は、おなじ方向へ、流れている。海へと、向かって。
場所ごとの、流れ
こどもを想う、ぼくたち大人も、おなじなんじゃないか。ずっと、そう思っていた。
先生がいる。お父さん、お母さんがいる。おじいちゃん、おばあちゃんもいる。——それぞれ、立っている場所が、ちがう。だから、こどもへの、かかわり方も、ちがう。きびしく見守る人。やさしく包む人。じっと待つ人。背中を押す人。——方向も、勢いも、やり方も、川のように、みんな、ちがう。
おなじ、海へ
でも、と思う。すこし、ひいて、見てみれば。
その流れは、ぜんぶ、おなじところへ、向かっている。この子に、ゆたかに、生きてほしい。しあわせに、育ってほしい。——その、大きな想いの流れは、どの大人のなかにも、おなじように、ある。やり方は、ちがっても。立場は、ちがっても。向かっている海は、おなじ。こどもの、ゆたかな生、という海へ。
お家の人に、伝えてきたこと
ぼくは、お家の人に、こんなふうに、伝えてきた。
一見、ちがう方向に見えるかもしれません。ちがうやり方に、見えるかもしれません。学校と、ご家庭で。あるいは、地域で。——でも、それは、ぶつかることじゃない。だって、想いの流れは、おなじところへ、向かっているから。この子の、ゆたかな生へ。
おなじ流れの、なかで
おなじ川の、おなじ流れの、なかにいる。
先生も、お家の人も。やり方は、ちがっても。速さも、方向も、ちがっても。——みんな、おなじ海へ、たくさんの枝分かれもある。
こどもの、ゆたかな生へと。その海を、わすれないでいたい。いろんな流れを感じながら。