プロフィール

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SENSEI NO SHIGOTO

教室で子どもたちと過ごしてきた日々のなかで、考えたことを書いています。ゆっくり、ひとつずつ。

形にしたもの

棚の上に、トロフィーが並んでいる。

金色に光って、名前が彫ってある。賞状も、きれいな額に入って、壁にかかっている。——よくある風景。ぼくも、子どものころ、もらった賞状が、うれしかった。点数のよかったテスト、よくおぼえている。

わかりやすい、ということ

点数や、賞のようなものは、わかりやすい。

数字になっている。形になっている。目に見える。だから、ならべて比べることもできるし、「がんばったね」と、はっきり言うこともできる。学校も、ぼくたちも、つい、それに手をのばす。点数をならべ、賞状をならべ、トロフィーをならべる。わかりやすいものは、安心する。そこに、たしかな「成果」があるように見えるから。

ぼくも、そうだった。見えるものを、たくさん並べれば、ちゃんと教えている気がした。

でも、そこにはない

でも、と思う。ほんとうのほんとうは、たぶん、そこにはない。

点数は、その子の学びの、ほんの一部を、数字にうつしたもの。賞状は、ある日の、ある結果を、紙にしたもの。どれも、たしかに、その子の何かを映している。けれど、それは、やっぱり、形にしたものだ。形にした、その手前に、形にならない、もっと大きなものがある。

花を見て、息をのんだ、あの瞬間。むずかしい問題に、ひとりで、じっと向きあっていた、あの時間。できなかったことが、ふっと、できるようになった、あの、こみあげるもの。——そういうものは、点数にも、賞状にもならない。でも、ほんとうは、そっちのほうが、ずっと、その子の学びなのだと思う。

ほんとうの、スタート地点

おもしろいのは、そのことに気がついたとき、何かが、はじまる、ということだ。

「見えるものが、すべてじゃない」。「ほんとうのものは、形の手前にある」。——そう気づいたとき、ぼくは、やっと、ほんとうのスタート地点に立てた気がした。点数を数えていたときには、見えていなかったもの。賞状をならべていたときには、通りすぎていたもの。それが、ふいに、見えはじめる。

スタート地点は、大人や社会が決めたゴールのように華やかではない。賞状も、トロフィーもない。でも、そこからしか、はじまらないものが、ある。

そこから、はじまる

その地点に立ったとき、ぼくは、やっと、こどもと、ほんとうに、学びはじめられる気がする。

点数をつける相手として、こどもを見るのではなく。賞をあたえる相手として、見るのでもなく。いま、ここで、何かを感じ、何かに向きあっている、ひとりの人として、こどものとなりに立つ。その子の、形にならない学びを、形にならないまま、まなざす。——そこから、ほんとうの学びが、はじまる。

見えるものは、わかりやすい。でも、見えないものに、目をこらすこと。形にならないものを、形にならないまま、大切にすること。ぼくは、そういうせんせいで、ありたい。むずかしいけれど。ときどき、棚の上のトロフィーから、目をあげて。